継子を愛せなくても自分を責めないで
継子と一緒に暮らすようになって、そばにいる継子の問題が目に付くようになると、初めは我慢出来ていても少しずつストレスが募り、やっぱり継子を愛せない自分に気づくことがあります。
継子を愛せません。抱きしめることも触ることもできません。
相談に来られる継親さんの中には「継子を愛せません」とご自身を責めながら話される方も多いのですが、愛せなくていいんですよ。
むしろ愛せるはずがないんです。
生理的に嫌悪感を感じるのはあなただけではありません。
子育て相談や、友人知人、親に相談すると、愛してもらえないなんて子どもが可哀そう・・・という雰囲気になることがあります。
「抱きしめてあげればいいのよ」なんて見当違いのアドバイスをもらうこともあります。
そういったアドバイスは「ステップファミリー」には当てはまらないのです。
何故愛せないのか
そもそも、なぜ人間は子どもを産み育てるのかというと、自分の遺伝子を残したいという本能があるからです。
人間に限らず、すべての生き物は自分の遺伝子を次の世代に残したいと思っています。動物も、植物も、この世の中に生まれてくるものは全て、自分の遺伝子を残すために生きています。
動物行動学研究家の竹内久美子さんの『本当は怖い動物の子育て (新潮新書) [ 竹内久美子 ]』という本を読んでみると、多くの動物が自分の遺伝子をより残すために行動しているのかが分かります。
最初この本を読んだときは衝撃を受けました。
本の中には動物だけでなく、人間の虐待についても取り上げられています。
虐待要因の一つに「自分の子どもであるかどうか」という点があり、ステップファミリーや里親にはそのリスクがあるという研究結果も記されています。
ここまで聞くと、継親には辛い本のようですが、読み進めていくと「自分がなぜ継子を愛せないのか」という理由が分かります。
自分の遺伝子が受け継がれていない
継子は、パートナーと別の人との間に生まれた子どもです。
その中に自分の遺伝子は一切ありません。
どれだけ一生懸命育てようと、いずれ継子が親になり子どもができたとしても、その子どもは継親にとっては血のつながりはありません。
動物の本能として、自分の遺伝子を残すことが重要だと組み込まれているので、血のつながりの無い継子を我が子のように愛することは難しいのではないかと思います。
「愛せなくても仕方ない」「血のつながりの無い子どもを愛することは誰だって難しい」という事実を一度受け止めてみてることは悪いことではないと思います。
愛せなくてもいい
ステップファミリーだとしても血のつながりが無くても「子どもは愛すべき」だという考え方では、愛せない自分を常に責め続けてしまいます。
「愛せなくても仕方ない」と自分を許してあげることは大事だと思います。
ですが、愛せないことを「開き直ってしまう」のではなく、継子のために自分にできることを探して続けていくことで、ステップファミリーはうまく回るのだと思います。
愛せなかったとしてもできることはあるはずです。
スキンシップができなくても、子どもの成長に必要なサポートはできるはずです。
継子のいちばん近くで生活する大人の一人であることは忘れずにいたいですね。
実親の理解
継親が継子を愛せないと悩む背景には、実親の理解不足もあるのではないかと感じることが多いです。
実親にとって、子どもは自分の遺伝子を受け継ぐ大切な子どもです。
生まれた時から、微笑むだけで可愛く、寝返りをするだけで愛おしく、ハイハイから立つようになり、歩けるようになり・・・そういった成長の過程をすぐそばで見守ってきた愛すべき存在です。
元気に生きてさえいてくれたら多少の欠点なんて気にならないくらい、実親というのは子どもを大事に想うことができます。
ですが、子どもを大事に想うがゆえに、継親が「子どもを愛せない」ことに対して理解できていないという問題も起きます。
継親が「子どもを愛せない、可愛くない、スキンシップを取るのが辛い」という悩みを抱えた時に、そこに対しての共感はしづらいのです。
だからこそ「子どもを愛せないなんてひどい」と思ってしまって、実親と継親の間でもめてしまうのではないでしょうか。
実親と継親では、子どもに対しての感じ方が全く違うことを理解しておくことは大事だと思います。
一緒に暮らしていく家族として
愛せないと悩む継親さんのお話を聞いていると、しっかりと継子のお世話をしている方が多いのです。
日常生活や学校行事、義両親との付き合いなど、頑張ってやってらっしゃる方ばかりです。
心から湧き上がる愛おしさを感じることはできなくても、一緒に暮らしていく家族として、やれることを毎日続けている自分を褒めてあげてほしいと思います。
そして、根底に「愛せない」という悩みを抱えながら、毎日を過ごす継親さんにとって、パートナーからの「ありがとう」ほど嬉しいものはありません。
小さなことでも、努力が積み重ねられていることに気づき、お互いに労い合いながら協力していけることがステップファミリーを長くやっていくコツなのだと思います。